長文置き場

長い文章の置き場として

同人小説がぼったくり値段だという話

最近、小説書きの作家さん宛に「同人誌の値段がぼったくりではないですか?」というような、いわゆる「焼きマシュマロ」が送られてたりするのをいくつも目にします。

代表的なものを挙げると、ちょっと目にしたものは「184Pが1500円でぼったくりではないですか?」というのもありました。あとは「同人は利益が出たらアウト」というもの。

私は漫画描きです。小説書きではありませんが、色々と考えさせられました。

さて、私はどちらかというと合理主義的なほうです。むしろ合理厨。何かに迷った時など場合によっては自分の好き嫌いという感情よりも、合理的であるか論理的であるかを優先したりします。あんまり良くもないんだけどね。

そして同人歴は長いです。相当です。同人から離れてた時期もかなりあるけど初サークル参加は高校1年なので昔の事情も良く知っています。

 

そんな同人歴も長く合理厨の私が『本当に同人小説はぼったくりなのか』を検証していきたいと思います。ちなみに「合理的」とは

1 道理や論理にかなっているさま。
2 むだなく能率的であるさま。

デジタル大辞泉小学館)より抜粋)ということです。

 

まず『ぼったくり』という言葉、辞書では「法外な料金を取ること。力ずくで奪い取ること。」(デジタル大辞泉)となっています。

世間で焼かれているマシュマロでは「法外な料金」という意味で使ってますね。マシュマロを送る人って書くと長いので、仮にAさんとします。

 

例えば

趣味で仏像を作っている人がいるとします。仏像を作るのに500円で丸太を買ってきました。ノミや金づちも500円で買ってきました。

毎日数時間、休みの日には一日中作り続け1年で素晴らしい細工の仏像ができました。

その仏像を見て欲しいという人が何人もいて、素人だからと5万の値で売りに出されたとします。ところがAさんは「1000円しかかかってないのにぼったくり」と言い出しました。これ、本当にぼったくりだと思いますか?

 

Aさんの言う、ぼったくり=法外な料金。これは「原価は安いのに上乗せしているからぼったくり!」という思考なんだと思います。

ちょっと待って。原価。原価って何でしょうね。多分Aさんは印刷費(紙代インク代の材料費+印刷所の工賃手数料)の事を言っているのでしょう。でもちょっと待って下さい。

原価というのは、材料費・工賃手数料・人件費・その他掛かった費用全部ひっくるめてが「原価」となります。またどこかから引用してもいいですけど長くなるのでwikiでも辞書でもググるでもして下さい。確定申告してる皆さんは嫌になる程ご存知ですよね。経理をしてる人も当然わかると思います。

という事は、同人誌の「原価」とは

・印刷費

・原稿を書くために使った機械の電気代

・原稿を書くために使った機械代(使った時間だけ按分)

・イベント参加費

・イベント送料

・イベント参加交通費

それとこれを度外視してる人が多いのですが

・原稿を書いた人の人件費

これも一応原価なんです。

 

プロの話じゃなくアマチュアの趣味の事に人件費なんて!と言い出すかもしれないですけど、ぼったくりという「原価」について言及してきた以上、人件費を入れないと論理的ではありません。

人件費を原価に入れるか入れないかは業種などでも変わってくるのですが、例えばマンガではアシスタントさんを入れた場合はアシスタント代は原価の中に入ってきますね。

プロ作家の人件費は原価に入ってないじゃん!と言われるかもしれないんですけど、だからプロの場合それをペイするのに出版社から貰える「原稿料」があるんですよ。印税は本を出した部数でお金が貰える分、論理的に考えると同人誌を出すのと同じようなものです。しかし同人誌は原稿料を誰かから貰えないので原稿料分として人件費を費用として考えてみましょう。

あと同人誌はアマチュアばかりではありません。プロの方もいます。プロ・アマ全ての作家が同じ土俵なので、プロだから人件費は入れるけどアマチュアは人件費入れないなどと言い出したら、それこそ論理が成り立たなくなります。それに今日アマチュアでも明日デビューしたらプロです。それで値段変わりますか?変わらないですよね?

 

ここまでが前提で、例えば190P程度の文庫小説を1500円で出した場合ぼったくりかを考察していきます。

私は漫画描きですが、元相方は小説書きで合同スぺも何度も経験してますし、友人で小説書きさんはいっぱいいます。ジャンルも色々ですから、緑陽さんのオフセットでかなり部数出してる方もオンデマンドで控えめな方も沢山知っています。それらのデータと友達に聞いた情報を元にします。

印刷費、部数によって値段は代わります。同人世界において友人であっても部数の話はタブーなどと言いますが、ここで部数の話をしないと始まらない。

同人において「小説は部数が出ない」などと言われます。もちろんジャンルやカプ、作家さんの知名度や人気で変わりますが、多くの小説作家さんがオフセットはおろか100部も出してない、むしろ50でも余る…なんてのもよく聞きます。

一応ここでは仮なので私が小説書きで平均的な印刷所で50部出したと仮定し、ざっくりとした値段です。

・印刷費50部 45000円

・電気代 500円

・機械代 500円

・イベント参加費 7500円

・送料 箱1つ1500円×往復分 3000円

・交通費 鈍行列車往復 4000円

 

ここまで合計60500円

私は交通費4000円で済んでますがもっと地方で北海道や沖縄だったらと思うとぞっとしますね。その場合飛行機代や宿泊費もかかるので2万~3万プラスで一気に合計90000円位になります。

 

そして人件費。

小説書きのお友達に190p書くのにどの位かかる?と聞きました。

文庫の商業準拠で標準的な組版の場合文字数は10万字超えるだろうとの事。毎日3000字書いても1ヶ月では足りない。毎日3000字書く場合、例えば原稿する時間が1日3時間だったら1時間1000文字書かなくてはならない。書いた分推敲もしなくてはならない。休みの日にいっぱい書いてもあるけど…。など聞きました。

個人差ももちろんあると思います。

そして私は漫画描きですけど…毎日3000字?!字書きさんってそんなに書けるの!?それでも1ヶ月かかるの!?

3000字って400字詰原稿用紙で7.5枚だよ?!読書感想文とか丸1日かけても4枚とかしか書けなったよ?!

…冷静になろう。じゃあ10万字書くとして、1時間1000文字だとしたら100時間かかるわけですよ。

これをじゃあ時給にしたら…時給もお安い1000円とした場合で100000円。時給だからこれで済むけど、これがプロ作家の原稿料とした場合、新人で妥当な値段の400字原稿用紙1枚2500円換算としたら一気に625000円まで跳ね上がります。

表紙や事務ページ、おしながき作成時間いれなくてこれですよ。推敲時間もほぼ入ってません。

それで計算した場合。

・時給計算 合計160500円 50部の場合 1部= 3210円

・原稿料計算 合計685500円 50部の場合 1部= 13710円

 

原価でこれですよ。1部1500円とかとんでもないです。

ここまで読んでもやっぱり人件費入れるなんて!って方もいるかもですね。

人件費抜いたとしても

・人件費なし 合計60500円 1部=1210円 

1500円で頒布したとして、290円×50部=14500円 たったの14500円です。

時給にしたら1時間145円。ブラックもいいところ。

これが遠くから遠征してたとしたら 合計90500円 1部=1810円

これ、完売しても赤字です。

しかもここまでの話、完売したらなんですよ。完売しなくて在庫があれば手元にお金は入りません。費用だけかさんでます。書店に預けるにしても書店に送る送料だって必要だし少部数だったら預けても売れなければ赤字の可能性もあるんです。

 

値段だけで言ったら、ぼったくりとは程遠い…。でも100部ならとか、200部ならとか言い出す方もいるでしょう。

100部の場合印刷費が60000円として

合計75500円 1部755円 これで1500円で頒布

差額745円なので74500円 時給換算745円

遠征組の場合 1部1055円 時給換算445円

コンビニバイトの方が儲かりますね。

しかも部数はプロでさえジャンルやカプや時期で変動するんです。今回のイベントで100部完売しても次のイベントで30部も出ないなんてことはザラに起きるんです。

追記 :勘違いされてる方が多いので追記です。ここまでの話は「184Pで1500円がぼったくりかどうか」の検証をしています。「原価」という言葉を使うのであれば本来の意味での「原価(人件費まで入れたら)」を計算するとこの位の値段になりますよ。という仮の計算です。人件費まで入れたら1500円どころじゃなくなっちゃいますよという比較の為に計算しています。

「同人誌の値段に人件費をのせよう」とか「確定申告で自分の人件費を計上しよう」などとは一言も言っていません。経理経験がなく「原価」の本来の意味を知らない方も多いのであえて、知ってもらうために引き合いに出しました。
確定申告でアマチュアの方が自分の時給を人件費にはできない事も、社畜時代経理も経験しているし、今は商業作家として自分で確定申告していますので勿論知っています。

確定申告で同人の経費になるのはこちら。

biz.moneyforward.com

 

さてここまで見ると、個人的に値段は法外な程のものではないという判断です。

しかし人件費入れないで計算した場合、差額がある事に目を付けたA子さんはきっとこう言います。

 

「二次同人で利益を出すのはアウトです!」

 

これは自分のぼったくりという言葉に正当性を持たせる為に「正義」を掲げています。卑怯なやり方ですね。

それで二次同人で利益を出すのはアウトなのか?

ここでよく混同してる方がいるんですが、著作権的アウトと税金的アウトを混同してる方がいるんです。

二次同人はグレーだと言います。これは著作権的な話でグレーです。なぜ白でもなく黒でもないかと言ったら、親告罪だからです。

二次同人の場合、厳密に言ったら翻案権または同一性保持権の侵害になるんでしょうか。友人に弁護士さんもいますがその辺相談するとお金かかってしまうので訊きませんけども。でもここで著作権者が訴えない限り罰せられる事はありません。

そして勘違いされてる方もいますが二次同人自体にも著作権はあります。二次作家の作品も、その人の原作にないオリジナルなストーリーや絵があれば、原作側の著作権とは別に、その人個人の著作物として著作権はあるのです。

二次同人が流行すると原作の宣伝にもなり大ヒットの可能性があるというのは原作側も周知しているので「訴えたら勝てるけれども訴えても原作側に得はなく、訴えるとマイナスになる場合もあるので黙認を貫かせて欲しい。むしろ応援したい。」と思ってるところがほとんどです。

 

それでも見過ごせない場合があります。原作丸々複製するような「海賊版」、原作と見間違うような「原作そっくりの絵柄の同人誌」、原作の作成したものと変わらないような「グッズ」です。ようするに原作や公式と見間違うようなものはアウト。

あれ?利益が出たらの話は?ってなるかと思いますけど、著作権的な話から見ると「利益を出しちゃダメ」って話はほとんどが個人ベースではなく法人ベースで原作側の利益や権利を侵害するようなものです。

例えばどことは言いませんが他出版社から出した原作側がOKしてない同人アンソロジーとかですね…。昔は本当に多かった…。それでもお目こぼしされてた…。

 

大昔に、壁大手やシャッター大手が利益出して、マンション買ったとか外車買ったとかいうバブリーな話がありますけど、それでも原作側から訴えられたという話は正直一度も聞いた事がありません。今より昔の方が作家が少なかった分利益は半端なかったと思います。

で、じゃあなんで「利益出したらアウトなの?」って事になるんですけど、そんなバブリーな頃よく聞いた話が「同人で儲けすぎて税務署が入った」これはよく聞きました。

今は同人でも利益を出してる作家さんとかは確定申告ちゃんとしてると思いますが、昔は会社員で同人やってて利益めっちゃ出してるけど会社にバレたくないから申告しないとかよくあって、それで同人で脱税にならないようにノベルティや装丁にお金かけてトントンになるようにして「これは商売ではありません!」「利益は出てません!」ってしたんですね。それで「利益は出てませんから法人ではありませんし同人だから商業流通にも乗ってません!」って言い訳的な…まあそれでも本当は申告だけはしなきゃダメなんでしょうけども。

 

それでこの辺の「同人程度の二次はいいけど法人ベースはお目こぼしできない」ってのと「利益出てないし法人じゃない」ってのが税務署関係と著作権的なグレーと混ざって「同人は利益出したらアウト!」って都市伝説のように語り継がれてる感じだと思います。

あと「営利目的」という言葉を盾にしてる方もいますがこの「営利」も基本法人ベースの話です。同人程度の営利だとさっき計算したように厳密にやったら大抵の同人作家が赤字です。

小説じゃなく漫画だとしてもさっきのように厳密に計算すると32Pを500円として800部完売してはじめてトントン位じゃないでしょうか?しかも生活するとしたらそれを1.5ヶ月に1冊位コンスタントに出してやっと年収300万円位ですかね?

 

あと前に見かけたのが

「買う方だって会場まで交通費使って時間かけて本を買うのにお金使ってる!趣味なんだからお金使って当たり前なのに、同人作家が利益出たりとんとんになるのはおかしい。趣味はお金を使うものだ!買う方と同じように同人作家だってお金がマイナスなのは当然!」

という意見を見かけました。

これもちょっと待って下さい。計算していきましょう。

 

・Aさんが交通費4000円かけてイベントに行って5000円分本を買いました。9時から並んで10時に会場に入り12時まで買い物をしました。使った時間は時給1000円で換算してみましょう。

4000+5000+3000で合計12000円のマイナスですが、手元には同人誌5000円の資産が残りました。

・同人作家Bさんを前述の時給1000円計算した場合、100時間原稿に使ったので費用合わせて160500円マイナス。会場にいた時間は9時から15時で6000円マイナス。50部本が出て75000円プラスになり合計79500円のマイナス。資産は0。

 

これ本当にずるいと思いますか?同等にするならAさんも100時間は掛けて買い物しないと不平等ですよね?

ここまで長々とお話しましたが、Aさんに対しては正直「イヤなら買うな」と申し上げるのが一番ですし、ここまで読んで下さっても納得できないなら同人に向いていないとしか申し上げられないなと思います。

 

そしてカッとなってここまで書きましたが、これを書くのに5時間かかりました。

5時間もかかったなら推しの絵でも描いていた方が私にとっては生産性があり、この行為はまったく合理的じゃないので少々自分でも「何してんだろ…」な気持ちです。

1000円の時給換算ならマイナス5000円です。マンガだったら5時間あったら2P~4Pはペン入れられますよ。わーん!!これだから修羅場明けの漫画描きは気が大きくなってるから…!

焼きマシュマロみたいな悪意がこうやって関係ない漫画描きまでマイナス効果をもたらすのですごいですね。これが呪(しゅ)か!

 

とにかく小説書きさんも気にせず好きに値段設定してください!同人は楽しく!続けられる範囲で!ちょっと利益出たらそれで美味しいもの食べてもそれを糧に次も本が出せたらそれは必要な費用!!

 

 

追記

色々な方からメッセージを頂きました。上記の文章では不十分だった事に関してもお答えしていますのでこちらに追記させて頂きます。

 

 「相場についてのお話」

 

前述した通り、小説書きのお友達は沢山いますし、私自身小説同人誌は買っています。
相場の事ももちろん知っています。
ですが、今回「相場」の話は一切していません。それはどうしてかというと論点が違うからです。
今回は「ぼっくたくりか否か」を検証していく為のものでした。
なので「ぼったくり」という論理の前提となる説明を辞書から抜粋したのです。
文字書きさんであれば私などより言葉について意味を大事にされるかと思いますので、老婆心ではありますが、もう一度ご説明すると「ぼったくり」と言う言葉は「法外な料金を取ること。力づくで奪い取ること」と辞書で定義されています。
今回はこの「ぼったくり」=法外な料金かという事の検証でした。

匿名でいらっしゃるので貴方様の呼び方をどうしていいか迷いますが…。きっと貴方様は
「その本の価値に比べて値段がぼったくり」ではなく「相場に比べて」を重視されるのでしょう。

「相場」同人において暗黙の了解と言われるものです。
相場って、不思議ですね。例えば世の中に流通してる商品、キャベツが200円で、別の有名産地のキャベツが500円だったとして、重さも大きさも同じだったとします。これって相場はどうなるんでしょう?
500円の方を相場より高い!ぼったくり!と感じて買いませんか?
では200円のキャベツをあなたが作ってるとして、500円のキャベツは他の人が作ってるとします。
ある人は500円キャベツを「この産地のキャベツの味が好きだから、相場より高くても買う」と言うかもしれません。
でもあなたは500円のキャベツが高くて許せなくて、そのキャベツを作ってる人に「ぼったくり」と裏で軽蔑しますか?
でもそのキャベツを作ってる人にも事情があるかもしれません。「普通のキャベツより高い農薬を使っている。輸送費が高い」など色々な事情があります。200円で売ってはものすごい赤字で皆に自分のキャベツを食べてほしくても生活費を圧迫してとてもじゃないけど栽培できないので500円という値段をつけたのかもしれません。
この場合、キャベツ作りを泣く泣くやめるか、高くてもキャベツを買いたいという人が買うかのどちらかです。
でも貴方が「高いから値段を合わせろ!」という権利はあるのでしょうか?

こういう話をすると、流通してる商品の話で、趣味の話ではない!趣味は利益じゃない!と仰る方がいます。「趣味は労働じゃない」と。
趣味…確かに読書や映画鑑賞でしたらそうでしょう。
でもたまにいますね。「仕事が趣味です」という方。これだと破綻しませんか?
「趣味は労働じゃない しかし 労働が趣味となりえる」これは成り立ちますね。
「趣味は労働じゃない しかし 趣味が労働となった」商業プロになった人とかはこれも成り立ちます。
じゃあ「趣味で金額にかかわらず収入を得てはいけない」これはどうでしょう?これ法律かなにかで決められてもいませんし、前述とも破綻してしまいます。
「お祖母ちゃんが趣味で園芸栽培していて出来た野菜を勝手に値段を決めて無人販売で売る」これもダメになってしまいます。
たぶんダメだと思ってるのは
「趣味の結果利益が出てしまった」のではなく「趣味で儲けようとする事」
そして
「趣味が二次創作という著作権的にグレーであるもので儲けようとする事」
法律的にOKかどうかという論理的な話ではなく、これへの主観的嫌悪感ではないですか?
これは勿論褒められるべきことではありません。実際最初からそういう方に対しては皆さん敏感です。
でも同じ190P1500円という値段でも
「最初から儲けようとする人」と「実際は大赤字で生活費を切り詰めて出してる人」と「最初から儲けるつもりではなかったけども実際には利益が出てしまった人」とでは、論理ではなく主観としてかわってきますね。
でも、その値段で出してる方がどういう意図でその値段なのかがわからないから、弾圧される原因になるんだとも思います。

同人の相場の話に戻しましょう。
貴方様が仰ってる「P数×10」これも昔からよく目にします。でもこれ、誰が決めたんでしょう?何方が制定したかご存知ですか?私は誰が言い出したか知りません。
たぶん何十年も前からあります。でもその計算「ただしA5に限り」ですよね。
昔は文庫で印刷してくれる同人印刷所はほとんどなかったですし。
そしてその計算だと文庫の場合、190P×10だったら1900円になってしまいます。

例に出した文庫190P1500円はあくまで「例」で実際の誰かの装丁の話ではありません。
ですが、貴方様は文字数でA5に換算してされて100Pになるとおっしゃられました。何故そこでわざわざA5に換算されたのでしょう?文庫の話で計算していたはずなのですが…?
同じ文字数でも文庫の方が高くつく。これは当然です。だってP数が多くなるんです。
印刷所というのは判型の大きさが小さくなってもP数が多くなると印刷料金は高くなる。これは皆さんご存知ですよね?
それを文字数で換算して、貴方様は印刷料金は度外視して、文字数で料金を決めようとなされました。でも文字書きさん達は文字数で相場を決められいませんよね?
先ほどまで「P数×10」と仰られていたと思いましたが、それとも相反します。

そして、貴方様が見かけて「だいたいみんなこれくらい」と思っているその相場、何十年も変わってないんですが、変動すると疑った事はありませんか?他の物価は何十年たったらだいぶ変わってるのに同人誌の相場は変わらないと思いますか?
今印刷業界や紙業界で「紙の値段が値上がりするので印刷代も高くなる」と言われています。どの位高くなるかはわかりません。それで印刷代が高くなっても、貴方様は「趣味だし昔からの相場だから」と値段は変更しませんか?誰か大手が値段変更したらそれに右に倣えしないと言い切れますか?

またこれは昔から論争になるんですが「装丁が立派だからってそれを頒布金額に乗せるな!」これ、根深いんですけどこれも元は昔のバブリー時代脱税にならないように大手さんが印刷料金度外視して頒布した結果、「大手がこんなに装丁凝ってても相場値段なんだから」言い出したのも理由の一つだったと記憶しています。そのせいでみんな高い装丁でも値段に乗せるのを躊躇するようになったんですね。

正直、今バブル当時程、同人で利益を出してる人はいないと思います。昔の大手さんは何千万単位などという伝説がありますが、今は聞きませんよね。
私は同人で儲けろとは決して言いません。でも相場からずれたとしても本当の意味で利益が出てるかはわからないものだと思ってます。値段は高いと思ったら買わなければいいし、誰かに弾圧されてムリに値段設定するものではないと思っています。
そして、時代の流れで変更されたり、してもいいと思います。
また、豪華な仕様にしたいけど高額にしちゃうとぼったくりと言われるからと諦めたりしなきゃいけないなんて、同人ってそんなものだったかなあと思うのです。
自分の作りたいものを自分の設定した値段で、欲しいと思った人だけが買う。それが元々同人の始まりですし。ある程度の相場はあっても多少はみでてもいいし、欲しい人だけが買えばいい。すみません、これは論理ではなく私の主観でした。

同人誌を買う人も馬鹿ではありません。安かろうが高かろうが「欲しい」と思わなければ買いません。そして同人誌の相場あれこれについてはほとんどが女性向けの話で、男性向けでは「相場からはずれてるからぼったくり!」という話が出たのは、私は耳にしたことがないので、実際のところどうなのか知り合いの男性向けの作家さんにどんな感じなのかそのうち聞いてみたいと思います。

また長くなってしまい申し訳ありません。ちなみに私は漫画描きの同人誌の相場で出してる方です。あれだけの記事を書きましたがあれは論理ですし、自分の同人誌に人件費を加味した事はありません。しかしただ「相場」というものが盲目に信じるものかというと疑問でもあると言いたかったのです。反論もあるかと思います。同意できないかもとも思います。でも何か考える切っ掛けになれば幸いです。

 

 

「二次創作は許可されているのか?」

 

読んでるうちにわからなくってきた。というお気持ちわかります。
ただでさえ白黒はっきりつける事が難しいからこそ、こんなに論争になりますしね。

ブログに書いたものは、同人小説作家さんにだけ「ぼったくり値段ではないですか!?」というマシュマロが送られてきていたので書いたものです。
あくまでも「同人小説の値段は本当にぼったくりなのか」というのが論点であり、同人の利益の是非を問うという話ではありません。
そして良い悪いの主観ではなく、論理という点での話を致しました。

そして貴方様の疑問に対して私なりにお返事していきますが、論理ではなく主観も入ってしまう場合がありますので、ご了承下さい。

さてまず、揚げ足を取る用で申し訳ないのですが、
「オリジナル作品は好きに値段設定したら良いと思いますが、二次創作はあくまで趣味だから」というお言葉なのですけども、
オリジナル作品の同人誌というのも「オリジナル同人誌を出すのが仕事です」という方以外分類すると「趣味」になってしまうと思うのです。

これは他の方のお返事に書いた事なのですが、申し訳ないですけれど引用させて頂きます。
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こういう話をすると、流通してる商品の話で、趣味の話ではない!趣味は利益じゃない!と仰る方がいます。「趣味は労働じゃない」と。
趣味…確かに読書や映画鑑賞でしたらそうでしょう。
でもたまにいますね。「仕事が趣味です」という方。これだと破綻しませんか?
「趣味は労働じゃない しかし 労働が趣味となりえる」これは成り立ちますね。
「趣味は労働じゃない しかし 趣味が労働となった」商業プロになった人とかはこれも成り立ちます。
じゃあ「趣味で金額にかかわらず収入を得てはいけない」これはどうでしょう?これ法律かなにかで決められてもいませんし、前述とも破綻してしまいます。
「お祖母ちゃんが趣味で園芸栽培していて出来た野菜を勝手に値段を決めて無人販売で売る」これもダメになってしまいます。
たぶんダメだと思ってるのは
「趣味の結果利益が出てしまった」のではなく「趣味で儲けようとする事」
そして
「趣味が二次創作という著作権的にグレーであるもので儲けようとする事」
法律的にOKかどうかという論理的な話ではなく、これへの主観的嫌悪感ではないですか?

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オリジナルも二次創作も「趣味」だとしたら、なぜ二次創作だけ同人誌の費用を回収するのはおかしいのか。オリジナルと二次創作の違いは公式様の著作権を侵害してるか侵害していないかですよね。そしてその主観的嫌悪感です。

まず、前提として、著作権に関する話と、利益に関する話は別になります。

二次創作、これは基本的に著作権を侵害しています。私的利用(自分で描いて家族や友達に見せる程度)以外は大体侵害をしてしまってます。同人誌でもネットにアップするでもです。ただ法律もどんどん変わってきていますし、私は弁護士ではありませんので、細かい法律部分は申し上げる事はできません。
それでも、利益が10円でも1万円でも関係ないのです。みんな侵害してしまっているのですから。

ですが、著作権親告罪ということで、公式様が同人誌の存在を知っていてもお目こぼしして下さってます。
著作権侵害ばかりの場である同人イベントに、出張編集部で色んな出版社さんいらっしゃったり、企業スペースを出展しています。同じ場にいても見てみないフリをして下さっているのです。
基本的には「公式様の経済的利害を阻まない限り」大抵お目こぼしして下さってるかと思います。
この「公式様の経済的利害を阻む」色々ありますけれども、例えば公式のイメージを大幅に下げたり、公式が出そうと思っていたと思われる公式から出たように見えるグッズや、公式に見間違うような書籍…今まで見てきたものだとこういうものが公式様から警告などを受けるのを見ました。

話がずれてきてしまいましたね。大抵のものはお目こぼしされている…。今後はどうなるかわかりませんし、公式様によっては「派手に利益を出しているサークル」に警告しているかもしれません。
しかし、利益があってもなくても著作権的に「公式様がダメと言ったらダメ」なのです。

そして利益、これは税金に関わる部分です。
同人誌で金銭の授受がある場合、税金の対象となってきます。コミケに税務署の人達が視察に来ていて派手なサークルをチェックしていく…なんて都市伝説もあるくらいです。
泥棒したお金でない限り、税務署にとって同人での収入は課税対象です。それが著作権侵害かどうかは関係ありません。プロかアマかも全く関係ありません。
最近は「同人作家専用の税理士さん」なんて方もいらっしゃいます。

貴方様は確定申告や経理・簿記の知識はございますでしょうか?
確定申告する場合、売り上げは勿論ですが、経費も計算します。印刷費・交通費・イベント参加料など…こういうものは経費になります。
ブログに書いた「原価」というのはこういう経済上の話としての原価です。
イベントで190P1900円が他の同人誌と比べても高い!ぼったくり!と言われても、確定申告で申告した結果赤字になったりします。

これは二次創作だけの話ではありません。趣味でもハンドメイドの作品でも金銭の授受があれば、税務署は「収入のある労働」とみなすのです。

なので貴方様の疑問である
「二次創作は「趣味」という前提がそもそも間違いで、二次創作は「仕事」として公式(出版社)に許可された行為なのか?」
という問いに私なりに答えるとすると
「二次創作は趣味であるけれども金銭の授受がある以上、税務上は労働とみなされる。しかしそれとは別として公式様は利益に関わらず同人誌について黙認して下さっているが公式様がダメと言ったらダメ」になるかと思います。